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【連載4回】名医の診察室 がん研有明病院 清水研 医師
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がん医療、がん研究をつねにリードする病院で、がん患者さんの心のケアを行う清水先生。「精神腫瘍科」という場所でどんな相談ができ、相談することでどんな世界が見えてくるのか第1話〜第3話でお聞きしました。ラストとなる今回は、患者さんの家族が抱える悩みについて、そしてこれからの社会についてです。

 

本人だけじゃない?がん患者を支える家族の悩み

精神腫瘍学の分野では家族は第二の患者、といわれていて家族の精神的苦痛は、がん患者本人より大きいというデータもあります。

がん患者さんの家族の悩み

家族ががんになると、ご本人の心情を推し量ろうとするあまり、悪い方向に考えがちです。「きっと絶望しているに違いない」と心配する方は多く、どう寄り添えばいいのか分からないという相談も多いです。

大変なのは患者さんですが、家族も大変です。患者さんのご家族には、大変ななか頑張っている自分を認めてあげてください。完璧にできなくても自分を責めないでください。時々手を抜いて休んだり、自分にご褒美をあげてください、と伝えています。
「本人がつらいのだから私はもっと頑張らなきゃ」と自分を追い込みがちなご家族こそ、セルフケアが大切です。

散歩する夫婦

 

患者さんの支えになりたいと思ったら

がん患者さんの家族は、患者さん本人を支えようと必死になり、カラ回りすることがあります。何かしてあげたい、家族が大変なときに自分は何の役にも立たないと思いたくない、そんな気持ちから「あの病院のこの先生がいいらしいよ」「あの治療法が効くみたい」など、良かれと思って言ってしまうのです。
しかし、患者さん本人は現状の病院や医師、治療法に何の不満もないかもしれず、家族の言葉を鬱陶しく感じることもあるわけです。

一番大切なのは、患者さん本人が病気になってどう思っているか、何をしてほしいか理解すること。何を考えているか、それを知るためにまず話をしてください。「話をする気にもなれない」と言われたら、そっとしておいてください。話せる状態であれば心配事を聞く。どう受け止めて、何を心配しているのか。十分に理解すること。
ご本人の立場に立って考えようとする、そのことが一番ありがたいんじゃないでしょうか。

花

何かしてあげたいと思ったら、はやる気持ちをおさえて、それが本当に本人にとって役立つことなのか、一呼吸おいて考えてみましょう。具体的な手伝いが出来なくても、まずは本人の気持ちを受け止めて「できることがあったら何でも言ってね」と、見守っていますよと伝えるだけでいいと思います。

何も言ってこないのはじれったいと思いますが、そばにいる、心配している、気にかけていることを伝えるだけで、いざとなったら頼ってくれると思いますよ。

 

これからの社会に期待すること

がん哲学外来のような、患者さん同士のコミュニティの場が増えればいいと思っています。実際スヴェンソンで開催された会を見に行ったことがありますが、これからは患者さん同士だけでなく、さらに枠を広げて家族の心構えを知ることができる場所があればいいですよね。

「家族もケアが必要なのです」という強いメッセージを、歯を食いしばって頑張っている方々にお伝えしたいです。

がん患者さんのための場所が増え、それはとてもいいことだと思うんです。けれど、家族が相談できる場所は、まだまだ少ないように思います。
患者さんだけじゃなく周りの方々もケアできる、ケアするのが当然となるような、細やかで優しい社会になればと願っています。

2020年1月 取材


清水 研 医師
がん研有明病院 腫瘍精神科 部長。2003年より、国立がん研究センターでがん患者と家族の診療を担当。医療者が患者に寄り添う医療現場での指導・講演活動も行う。『もしも一年後、この世にいないとしたら』(文響社)など、著書多数。
取材時:国立がん研究センター 中央病院 精神腫瘍科科長

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