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【前編】名医の診察室 広島大学病院 舛本法生 医師
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信念をもって仕事に向き合い、患者さんのために自ら行動する、そんな名医を訪ねてお話を伺う『名医の診察室』。おかげさまで、たくさんの反響をいただいております。シリーズ2回目となる今回は、広島大学病院の舛本法生先生。
まちなかリボンサロンをはじめ、院外でも患者さんの生活をサポートできるよう、取り組んでいらっしゃいます。記事は<前編>と<後編>2回の連載です。舛本先生の活動を、ぜひ、お読みください!

患者の話を聴く舛本先生

患者さんに長く携われるから、
乳がん専門医を選んだ

私は愛知県の藤田医科大学を卒業後、1998年に広島大学病院に研修医として一般外科に配属されました。実際の医療現場で多種多様ながん治療を勉強し、大学院時代に肝臓の再生医療に携わったあと、乳がんの専門医になることに決めました。
乳がんは診断から携わることができるがんなんです。消化器がんや肺がんなどの患者さんは、内科で診断されてから外科に来られます。一方、乳腺外科は乳がんの疑いのある段階から精密検査に携わることができます。場合によっては検診から携わっている乳腺専門医もおられます。検診(予防)→診断→治療や手術→術後のサポートまで、最初から最後まで患者さんに携わることができるので、そこが他の分野と違うなと思いました。
その職域の広さと奥深さに魅力を感じて、乳がんの専門医の道を選びました。

広島大学病院は乳腺専門医5名、乳腺外科診療医3名の合計8名の医師が在籍していて、このメンバーで診療を行っています。
外来に初めて来る患者さんの半数は、病名が確定していない、健康診断などでがんの疑いのあった方です。先ほど言ったように、診断前の検査の段階でお会いすることになります。

ピンクリボン

 

治療のことだけでなく、
その先の生活も一緒に考える

乳がんと診断された場合、「どんな治療をするの?」「生活や仕事はどうなるの?」「治療の副作用は?」など、多くの不安が浮かびます。患者さんには、完全に治る可能性が十分にあること、ご本人にとって最善の治療を選択いただくためにも、前向きな気持ちになっていただくことをお伝えしています。
外来には新患の方、手術前の方、抗がん剤治療中の方、術後フォローの方、そして再発患者さんなど、様々な状況の方がいらっしゃいます。患者さんと診察室でお話できる時間は平均で10分くらい。手術の前や治療方針を決めるときは時間をかけてお話していますが、患者さん自体が増えているので、医師の立場からみてもお一人おひとりに関われる時間が少ないと感じます。その限られた時間の中でなるべく正確に、そして患者さんの心に寄り添った伝え方ができるよう心がけています。

カウンセリング

肺や肝臓などに転移がみつかった患者さんは、その後の治療方針に悩まれる方が多いです。肺や肝臓など他の臓器に転移すると、がんを根治するというより「生活できる期間を長くすること」「症状を和らげること」に治療目的が代わってきます。
また、乳がんのタイプによりますが、ホルモン治療、分子標的治療、抗がん剤など、治療に選択肢がでてきます。治療薬には副作用があり、副作用が出るタイミングによっては日常生活に影響が出る場合もあります。
治療方針を決めていただく際は「今後の生活をどのように暮らしていきたいか」「生活するうえで大切にしたいことは何か」「副作用をどの程度許容できるか」を考えていただくようにしています。これらを決め、選択していくことは、患者さんやご家族からすると大変難しいことかもしれません。しかし治療方針を決めるうえで、患者さん自身の意思を尊重するのはとても大切なことですので、なるべく時間をかけて、ご家族を交えて一緒に考えていただくようにしています。

選択

Stage4の乳がんや再発乳がんの治療は急速に進歩し、治療できる期間が以前に比べずいぶん長くなっています。実際に長期間、笑顔で通院いただいている患者さんもたくさんいらっしゃいます。
しかし一方で、病状が進行し、積極的な治療が難しくなることもあります。治療の継続が難しくなり、ご自身の考えを伝えられなくなった場合のもしもにそなえて、あらかじめ家族や信頼する人と話し、考えていただくアドバンス・ケア・プランニングをお勧めしています。最期を想像すると不安になりますが、ご自身はもちろん家族の心づもりとしても大切なことです。デリケートな問題で、家族間でも話すタイミングが難しい事柄だと思いますが、家族間、医療従事者と共通理解を得る良い機会ととらえていただければと思います。

LIFE

 

患者さんの不安に寄り添うために。
乳がん専門医、街にでる

乳がんになると、治療のことや副作用のことをはじめ、お金のこと、ご家族のこと、仕事が続けられるかなど、これから先のことで多くの不安が頭に浮かびます。患者さんが増える中、これらのことについて診察室でお話できる時間は充分ではありません。患者さんは病気と向き合う時間より、生活する時間の方が圧倒的に長いですし、普段の生活の中で不安や疑問がでてくることもあるでしょう。
そのときに不安を不安のままにしないで解消できる場をつくろう、というのではじまったのがまちなかリボンサロンです。「質問したいことがたくさんあるのに、診察時間が限られている」「診察室では気軽に聞けない…」そんな患者さんの手助けになればと、私の先輩 角舎先生の発案で立ち上げ、参加させていただきました。

まちなかリボンサロンの光景

まちなかリボンサロンはひと月に1回、患者さんや患者さんのご家族、一般市民の方が医療従事者とゆっくり話せる会で、主に乳腺専門医、看護師、薬剤師が参加していて、なんでも気軽に質問できます。
乳がんの治療に関わる医療者のミニレクチャー(講演)が1時間程度、そのあと5~6人のグループに分かれて、お茶を飲みながら患者さん同士でおしゃべりできます。医療従事者がテーブルをまわって、個人的な悩みをお聞きしたり、グループの会話に参加したり、和気あいあいと過ごします。この会を通して「たくさんの仲間がいる」ということもぜひ知ってほしいと思っています。多くの方が同じ病気で、同じように悩みながら生活していることが分かると、ずっと気持ちが楽になるのではないかと考えています。
広島大学病院の医師が中心となって立ち上げましたが、志を同じくする県内の病院の医療従事者も参加してくださっています。会の発足当初は続けていくことができるのか本当に不安でしたが、ボランティアの方の協力で今日まで継続できています。イベント当日の段取りや管理、会の運営に関してもボランティアの方と一緒に計画しています。

まちなかリボンサロンを終えて

運営資金はピンクリボンバッジなどの物販や、乳がんに関するガイドブックを作成したときの広告費で賄っているのが現状です。グッズの案やデザインも医療者、ボランティアのメンバーでアイデアを出し合って、楽しく頑張っています。ぜひ購入いただけたら嬉しいです。

カープピンクリボングッズ

>>後編はコチラ!

 


舛本法生 医師 プロフィール
広島大学病院 乳腺外科診療講師。2007年より同病院勤務。2011年まちなかリボンサロン(現・NPO法人ひろしまピンクリボンプロジェクト)の立ち上げに参加。院外で患者さんに寄り添う活動を続けている。

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