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患者さん×看護師さん発!『みんなのがん哲学外来』@名古屋
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対話を通じて患者さんの心をサポートする「がん哲学外来」をご存知ですか?
それはカルテのない、ひたすら話して考える時間。アットホームな雰囲気に包まれた「メディカルカフェ」も各地域で広がっています。2015年11月 名古屋では『がん哲学外来 しゃちほこカフェ』が誕生!その発起人となったのは、患者さんと看護師さんです。
(2015.12取材)

【発起人】彦田加奈子さん
Massel読者 3人のお子さんの母 がん経験者
【発起人】竹内るり子さん
元・拠点病院内 がん相談室勤務(現在は非常勤看護師)

しゃちほこカフェ 発起人

患者さんと看護師さん、出会いは食事会

————患者さんと看護師さんが発起人ということで、とても興味深く感じましたが、お二人はどのようにして出会い、「がん哲学外来」を開催されることになったのですか?

竹内:私達の最初の出会いは食事会なんです。私はもともと病院でがん相談の仕事をしていて、患者会を開催していました。その一環で医療用ウィッグメーカーのスヴェンソンさんに外見ケアの部分で協力して頂いていて、担当営業さんとも仲良くさせてもらっていたんです。その営業さんから「樋野先生が名古屋にいらっしゃるので、一緒に食事はいかがですか?」ってお誘いをうけて。樋野先生のことは前々から存じ上げていたので、是非直接お話しを聞いてみたいと思い、お休みをとって参加しました。

彦田:私はスヴェンソンさんでウィッグをつくった際にお世話になって、店長さんから「今度こんな食事会があるんだけど参加してみない?」とお誘いをうけて、そこで竹内さんと出会ったのがはじまりです。がん哲学外来 メディカルカフェ自体には何度か参加したことがありましたし、先生の本を読んだこともあったので是非!という感じでした。

竹内:わきあいあいとした食事会の最後に、樋野先生が「名古屋でがん哲学外来カフェをやってごらんなさい」と言われて。顧問の医療者として竹川茂先生(現在は富山県立中央病院)が協力してくださって、開催することになりました。

自分から参加しづらい現状、どうやって変える?

彦田:名古屋は「患者会」というものが活発なイメージがあまりなくて…病院の掲示板に案内が貼ってあることはあるんですけどね。医療者の方から「行ってみたら?」という誘いも特にないし、飛び込むかどうかは自分次第。それは勇気がいるので、結局は諦めてしまう、みたいな感じですね。

竹内:がん相談室もそうなんですけど、ドアが閉まっていると患者さんが入りづらいみたいで…。ちょっとだけドアを開けておいて、ドアの向こうから覗いた人に「入っていいんですよ~」って中から声をかけていましたね。

彦田:私が治療中に参加した患者会といえば、スヴェンソンさんで開催された、がん哲学外来メディカルカフェだったんですよね。それは自分がウィッグが必要になって、店員さんとの人間関係ができてから「来てみない?」って誘って頂いて、やっと参加できた感じです。
なかなか自分から飛び込めないというか。地方だとなおさらひとりで考え込んでいる方が多いと思いますね。今回の開催もインターネットで見つけて問い合わせしてくださる方もいましたけど、年配の方だとネットが使えない方もいらっしゃいますし。情報すらないので出会えないですよね。情報を持っている方が口頭で伝えてくださるといいんですけど…。

開催を取り持ったスヴェンソン店長:そういう方々にどうすれば伝わるか、告知の方法を考えるのはもちろんですけど、より参加する機会をもって頂けるよう、たくさん開催していきたいですよね。うちも企業の地域活動として、そういう仕組みをつくれるよう、取り組んでいきたいと思っています。「ちょっとあそこ行ってみたら?」って声をかけあえる集まりが、口コミで広がって色んな企業にもご協力頂いて…そんな場所づくりをしていけたらなって思っています。
いまメディカルカフェは全国で60~70か所くらいで開催されていますが、お2人のように医療者と患者さんが中心になったり、さまざまな形でもっと広がって、そのサポートができればと考えています。

ディスカッション

病院の外だからできる、を広げていきたい

彦田:私が治療を始めた頃、患者会に持っていたイメージは「患者同士が集まって、いろいろさらけ出す会。それって発散はできても答えはでないから、どうなんだろう?」って思っていたんです。でも医療者が参加していると、明確にではないけど、答えをふわっと撒き散らしてくださる環境が生まれるんですよね。ほっとして、安心できるんですよ。答えじゃなくてもヒントをくれる。探していることの答えが見つかるかもしれないって思わせてくれる。
しっかりした専門の医療者が引っ張っていってくれる会もあれば、私たちのように「とにかくお茶のみにいらっしゃい」みたいな会もある。ただ会いに来るだけの場所でも、いいんですよ。いろいろな形があることが大切。やり始めてよかったと思っています。

それと私、子供が3人いるんですけど、家族の中では普段感じられない、「誰かに必要とされている感じ」がすごくします。初めて会う方たちですけど、人のためになっていると思うと「幸せだなぁ」って思うんです。いろんな好みの人がいるので、いろんなことをしていきたい。バラエティに富んでいていいと思うんですよね。

病院の中だとやれることとやれないことの縛りがありますが、病院の外でやっているので気軽に立ち寄れる、そんな場所にしていきたいです。他の地域では行政から助成金が出て、開催されているカフェもあると聞きます。患者さんの置かれた状況や環境で、行きやすいカフェが選べたら良いですよね。最近、近所のコーヒーショップにがん哲学外来のチラシを置かせてもらいに行きました。そのお店では子供を集めてお楽しみ会みたいなものを開催しているので「子供の会もあるなら、こんなのどうですか」って。

店長:樋野先生の開催しているカフェや講演でも、お茶を提供してくださるお店があると聞いています。徐々に企業が加わってきてくれる動きが出ていますよね。

ラテアート

みんなウェルカム!話せて聞いて一緒に考える

————これまでやってきて感じたこと。そして今後、がん哲学外来 メディカルカフェをどのようにしていきたいかお聞かせください。

竹内:私はこの会を始める前は、病名に特化した情報提供がある患者会をインターネットでさがして、患者さんに紹介していました。医療者としてみた時に、がん患者さんの気持ちの部分で聞いてあげられることが少ないので。でも、樋野先生の講演を聞いて「こんな先生がいるんだ。すごいなぁ」って思いました。以前、スピリチュアルペインという、患者さんのスピリチュアルな部分に関わるケアに取り組んでいました。疲れてしまい身をひいた時期もあるんですけど、樋野先生に「君たちがやりなさい」って言われた時は、これは何かの縁であり私の使命だと思いました。患者さんにとって、本当にちょっとしたことでも助けになればと。
10人いたら10人は助けられないけど、1人でも「話ができて良かった」って思ってくれる人がいれば、私がそこにいた意味があるのかなと。

彦田:私は思いましたよ。すごい助かりましたよ。

竹内:がん相談室の仕事についた時もそうですし、この前も「あなたと話ができて良かった」って言ってくれた方がいて、こういうところから私は離れられないんだな、と改めて思います。病院は忙しい現場なので難しいですけど「医療者ともっと話したい」っていう時は、ぜひカフェに来て頂ければと思います。

彦田:家族ぐるみの参加や地域の方も加わって、子供も連れてきて、どんどん化学反応が起こればいいと思うんです。みんなで集まって話せて、聞いてもらえて一緒に考える時には医療者がそこにいる。「哲学」がキーワードなので誰が来てもいいですし、みんなウェルカムでやりたいと思っています。相談内容も病気だけでなく、よろず相談ですよ。生活や家族の相談から、患者さんを支えるご家族の相談まで。
聞いてもらうだけで軽くなることって、あると思います。

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▼「がん哲学外来 メディカルカフェ」各地の開催はこちら
http://www.gantetsugaku.org/clinic.php

樋野興夫さん

樋野興夫(ひのおきお)
*一般社団法人 がん哲学外来理事長*
島根県生まれ。順天堂大学医学部 病理・腫瘍学教授。医学博士。
(財)癌研究会研究所病理部、米国アインシュタイン医科大学肝臓研究センターなどを経て現職。
2008年より「がん哲学外来」を開設し全国に「がん哲学カフェ」を広めている。

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